どいキッズクリニック|舞鶴市浜の小児科・循環器小児科・アレルギー科

〒625-0036 京都府舞鶴市浜451-2

0773-62-0309

0773-62-0372

MENU

コロナウイルスその8

とうとう京都府にも「緊急事態宣言」が出てしまいました。ちょっと考えればわかることですが、国家が発出する緊急事態宣言とはみんなで頑張って感染を抑え込みましょうということでも個人に自粛を強制して従わない部分に罰則を与えることでもありません。今までの経過を総括してそれに基づいて今後国家としてどのような方針で感染を減少させ出来るだけ早く国民が通常の生活に戻ることができるかのロードマップを示すということであるはずです。その流れのなかで自粛や罰則はあるでしょうが、それらだけが強調されていて科学の論理に基づいた大きな流れの中での位置づけが示されていないことが問題です。だいたいこういった対策は平時のうちに検討しておくことが必要で、このような切羽詰まった時点で付け焼刃の対策をいくら打っても将来を見据えた長期的な展望は開けないと思います。
もっと大きい問題としてはこの間明らかになったのは日本の政治は科学を信頼していないということです。このような未知の感染症に対しては基本的には政策の方針は科学に基づいていなければならないのですが、これまでの経過を見ると政治が信用してきたのは空気―支持率が下がったからとか、go toをやめるのも世論に押し切られてとかーです。これは極めてまずい状況です。アベノマスクや、go toについての総括もやる気があるのかないのか、最低これくらいはやっておかないとちゃんとした次の手、方針は出ません。
とにかく、感染を避け生活を守るうえで公助ということがあまり期待できないのであれば、自助、共助しかありません。それにはまず科学的な知見に基づいた自分たちなりの方針で間違っていないことだとおもうことを続けていくことです。外出はマスクをつけて三密の場所にはできるだけ行かないことです。山中教授のいわゆるファクターXの一つは日本人のマスク文化であり、もう一つは強制されなくても自主的に行われた自粛であり、その代表的なものが三密を避けることです。Go toまがいの外出はやはり避けるべきでしょうし、政治家たちの会食はいわゆる反面教師―あんなアホなことはしないようにーだと思ってください。それでも残念ながら感染しない保証はありません。しかしこういったことを実行していくことで感染のリスクは確実に減っていきます。東京でさえ医療崩壊間近といわれる状況です。舞鶴でその100分の一の数の重症患者が出れば即舞鶴の医療は立ち行きません。
出来るだけ感染の可能性のある機会を減らすように努力してください。
さて本題の医療です。むちキッズクリニックでは全員がマスクはもちろんアイシールド、ガウンやエプロンをして診療にあたっています。受付にはビニールカーテンとアクリル板を設置しています。アルコール消毒液を各所に設置、トイレや手すり、机や床などこまめに消毒をしています。空気清浄機は以前から設置しています。三密(ちなみに英語ではthree C’sといいます)という考えはたぶん今度のコロナの世界的な蔓延に対してマスクの重要性の周知(ユニバーサルマスク)と並んで日本が貢献した最大のものであろうと思いますが、やはり寒くても一定程度の時間換気をすることはとても重要のようです。東京の友人も群馬や山梨で仕事することがあるそうですが、寒くても頑張って窓を空けているといっています。今回、開けた窓から虫などいろいろ入ってくることの防止のためクリニックの窓の内側に網戸を付けました。また三密を避けるため場合によっては車などで待っていただくこともありますので、呼び出しのベルを用意しています。おいでになったとき若干感染の可能性があるかもと思った方に対しては隔離部屋を用意しています。そこではよりしっかりした感染防御の準備をして診療しています。今の時点で日本で子供に感染が広がっているというエビデンスはもちろん可能性はほとんどありません。しかし20~30代の成人での流行はありますので、今後家庭内感染として増加してくる可能性は十分あります。つまり無症状または無症状に近いような親御さんからの感染が最も可能性が高いと思われます。親御さんは一週間以内でちょこっと熱が出たとか喉が若干痛かったというような些細な症状も、特に都会に行かれた方は問診時におっしゃってください。これらすべてやっていても感染防御にはこれで十分というところはありませんし、私のところのような通常のクリニックでは限界もあってこの時点でコロナの診療をするのは現実的ではありません。舞鶴での今後のまん延状況によってはもう一段レベルを上げることもあるかもしれません。
関東や都会では医療崩壊や医療壊滅といった言葉が飛び交っていますが、舞鶴近辺では、それなりに感染者は増加しつつありますが、まだリアルな感覚として感染爆発というようなところまではいっていないと思います。ただ私のような医療従事者のところにもきちんとした情報がないので、ほんとのことはよくわかりません。私のところに来るのは皆さんがパソコンなどで見ることができる感染者の番号、発表日、性別、年代、診断時の咳があるとか熱があるといったような症状程度で、感染経路であるとか感染したとおもわれる時点からその後の数日間どのような行動をしたのかなどは全く分かりません。医療崩壊かといわれるような所ではもうクラスターをおいかけることは無理ということになりそうですが、舞鶴辺りではここら辺の情報をきちんと整理すればまだクラスターを追いかけることは可能であろうと思います。
尾身さんは最近評判がいまいちですが、彼は10年ほどまえのSARSに対して中国政府と渡り合って情報を開示させその結果SARSを抑え込むに至った立役者です。ある意味人類の恩人かもしれません。彼にはその時クラスターを一個一個つぶすことで成功したその成功体験が強くしみ込んでいてその結果大規模なPCR検査に方針を転換するのが遅くなったのではないかというのが私の個人的な憶測です。ではどうしてそうなったのか。同じコロナウイルスの類であったにしてもSARSとCOVID-19には大きな違いがあります。後者は無症状であっても感染力が強いこと、若い人にはあまり症状が出ないこと、SARS程の死亡率ではないこと、増殖する部位が鼻、のど、口、つまり唾液が大きな要因であることなどです。昨年の早いうちはこれらの特徴がはっきり把握されてはいなかったし、実際クラスターを追跡することで一定程度の効果が得られていたのですが、go toなんかを始めた辺りではすでにこれでは抑えきれないということはほぼ明らかになっていたと思います。それからこれも私の憶測ですが中国ではいったん政府が号令を出したら津々浦々までその指令が行き届いてきちんと報告があったと思われるのに対して(それがいいかどうかは別ですが)日本では国民性からいっても中国なんかよりもっと自発的にきちんとシステムが動くと思っていたら保健所もシステムもさび付いていて動かなかったという大きな当て外れはあったと思います。科学からいくら言っても政治家は聞く耳を持たなかったということもあるでしょう。
感染が拡大方向へとシフトしてきているように見える現在医療崩壊を防ぐには・・・
コロナの患者を減らすしかないので、そのためには検査に金を使うしかありません。各々の行政にある衛生研究所の検査機器は予算もつかないので今でも旧式のものが多いといわれています。そういったことを含めて検査にお金を使うことです。
科学的な数理モデルでは検査をすれば感染を抑え込めることが判っているので、行政、医師会一体となってキチンとしたシステムを作って情報を公開して安心して検査を受けられるようにすることです。当然そのためには陽性とわかればその後どういう形で医療を届けられるかがシステムとしてできていなければなりません。
そしてやっぱりワクチンと薬です。まず薬については候補はそれなりにあるので、それらを緊急的に例えばアビガンにしてもイベルメクチンにしてもアクテムラにしても一定程度の条件が揃えば使えるようにしてもらいたいということはあります。とりわけ症状があっても入院していなければ有効な薬もつかえないという現実は一刻も早く何とかしなければいけません。ワクチンは流通がうまくいくかどうかです。これもディープフリーザーという超低温の冷凍庫をどれだけ調達できるかが問題になるようでは心もとないと思います。私自身としては医療従事者で老人なので基本的には打たないという方針にはならないと思っています。ただ2回打たなければいけませんし、集団免疫が国民にいきわたるのは日本でも一年では無理といわれています。
今後は基礎的な生命科学を支援して科学を信頼して論理にのっとった方針を実行する仕組みを作っていくべきでしょう。イノベーションなどというちゃらい言葉ではだめです。今までのことを総括して感染克服の論理を長期的な展望で再構築していくべきでしょう。
さて舞鶴ではこれらについてどうするのでしょうか。

TOP